あっぷる de アート「その男、野心家につき」

今回は自身を「世界一傲慢な男だ」と言った男の自画像から。
クールベのサロン初入選作品です。
好みの違いはあると思いますが、なかなかの男前。
本人も自覚あった上での、角度だと思いませんか?!
 (何だか犬までフフンッて表情?!気のせいかしら)
モデル料がタダで、好きなだけ描けて画力も上がるのが自画像なのですが・・・
「自分のことイケメンだと思ってたよね〜」って感じさせるのがクールベの自画像。
(まぁ、他にもナルシストな画家はいるんですけどね)
 

作品名:黒い犬を連れた自画像
製作年:1842
サイズ:4655cm
所蔵 :プティ・パレ(パリ)
作者 :ギュスターヴ・クールベ() 18191877
 
中にはこんな凄い表情の自画像もあるけど・・・
(お子さんが泣いたら御免なさい)
何に絶望したんだろ?!
いやいや「俺はこんな表情も描けるぜ」って野心が透けて見えませんか?!
 

作品名:絶望
製作年:18431845
サイズ:4555cm
所蔵 :個人
作者 :ギュスターヴ・クールベ() 18191877
 
クールベが自信家で野心家であったことは、言葉からも分かります。
「私は天使を描かない。何故なら天使は見たことがないから」
日常生活をありのままに、農民や石工などを美化せず描いたのです。
歴史画や神話画が格上!のサロン(官展)のお決まりなんて無視。
田舎の葬儀を巨大サイズで描いた『オルナンの埋葬』は物議を醸しました。
(サロンにケンカを売ったとも言えるわね)
 
1855年のパリ万博でも暴れん坊な気質は抑えられず、
これまた大作の『画家のアトリエ』等の出展が不許可となると、万博会場の側で堂々展示。
 (しかも入場料を立て看板に書いて・・・
どこまで強気なの!売上なんてどうでも良いの。初めにやったら英雄よ〜ケンカ売ってるけど)
後にサロンで扱き下ろされた印象派がグループ展示しますが、クールベは先に個展!
カタログに記載した言葉はレアリスム(リアリズム)宣言と言われています。
 
認められる画力がありつつも、サロンの当たり前に異議を唱え続けたクールベ。
女性を描いても「下着だ!!モデルは娼婦じゃないか!」と大騒ぎに。
(サロンの偉いさん達、神話の女神を言い訳にヌードOKにしてたくせに〜
きっと、モデルの誘惑視線=画家の挑発視線ね。)
 

作品名:セーヌ河畔のお嬢さんたち()
製作年:18561857
サイズ:174206cm
所蔵 :プティ・パレ(パリ)
作者 :ギュスターヴ・クールベ ()18191877
 
何故クールベはこうも反逆児なのか・・・
実家はオルナンの地主ですが、祖父は仏革命に身を投じたそうです。
(じっちゃんは仏革命に参加、孫はサロンに革命を♪)
反体制派のDNAは引き継がれていたのかしら。
そもそも生きた時代が、共和政と帝政がコロコロ、産業革命やら社会主義やら・・・
帝政に反感を持つのは自然だったのかも。
レジオン・ドヌール勲章だって拒否しちゃうし〜
(またまた反発心からナポレオン三世にあてつけ)
 
政治活動に参加するほど熱く立ち向かうクールベ。
ヴァンドーム広場の円柱引き倒しを先導したとされ、投獄の憂き目に。
実は芸術作品を守ることにも奔走。(良い人の一面も)
獄中ではモデルを雇うことも叶わず、静物画を描いています。
その後、スイスへ亡命しますが、深酒が祟り祖国の土を踏む事は叶いませんでした。
 
「私はクールベ主義だ。唯それだけのことである〜」画家の人生を象徴する言葉でもあります。
 
参考文献
「アサヒグラフ 別冊 美術特集 クールベ」
「岩波 世界の美術 クールベ」 JH・ルービン()
三浦篤()

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